
※この記事は2024年4月発売「大学野球総合版〜2024年春季リーグver」の選手インタビュー記事を加筆・修正したものです。
まっすぐ腕をのばし掴む 憧れた以上の景色
「まずピッチャーの意見を聞くってことを大事にしている」。捕手・石﨑の意識は練習外にも張り巡らされている。大学に来て最初にやったのはピッチャー一人ひとりの性格を理解すること。それをふまえて、「このピッチャーはこの言葉をかけられたらこんな気持ちになる」と予測しながらコミュニケーションを取るようにしている。
中学時代に所属した友部シニアクラブでピッチャーから転向して以来8年、キャッチャーとして普段の生活から人の行動を見るようにしている。それはシニアクラブの原田明広監督からの教えだった。野球人生を振り返り、原田監督との出会いを自身がぐっと成長したポイントとして挙げる。厳しくメリハリのついた人物だった原田監督のもとで、挨拶をしっかりすること、練習外の私生活もたゆまないことを学んだ。一人の人間として、そしてキャッチャーとして、大きな影響を受けたのだと話す。
その学びは大学に入った今も活きている。自分で言うのも何ですけど、と控えめに前置きながらも「練習量は誰にも負けない」と自信を持って語れるほどに、休みの日にもバットを振り、地道にコツコツ努力を積み重ねる。目標を達成するためには人が休んでいるときに自分は動かないといけない、という信念のもと生活のすべてを費やし、打者として、捕手として「継続は力なり」を体現する。
石﨑の成長に欠かせない存在は他にもいる。野球を始めるきっかけとなった父と兄だ。兄は明治大学を今春に卒業した石﨑聖太郎捕手。屈指の強肩で活躍した。六大学、東都とリーグは違うが、今も冬休みには父、兄と一緒にトレーニングをするなど「めっちゃ仲いいんですよ!」と顔をほころばせる。自分の中でずっと憧れの存在であり、同じキャッチャーとして教わったことを信頼して自信を持って自分にも取り入れることができるといい、憧れとして追いかける存在があるから練習時間外も課題をつぶし上を目指すための努力ができるのだろう。実際、國學院の練習環境は石﨑がストイックに練習に励むのに最適の環境だという。日中みっちり練習して、自主練では自分で足りないところを分析、さらにウエイトをしたりその日ごとの課題に取り組む。グラウンドと寮が隣接する立地も石﨑に味方した。
大学に入学して以来、改めて基本からしっかりと積み上げてきた練習の成果を形にする場がサマーリーグとフューチャーズリーグだった。結局うまくハマらず満足な結果は残せなかったが、だからこそ、かえって強まった思いがある。「勝負強い選手になりたい」。
ここぞというときに打てたり、キャッチャーとして盗塁を刺せればこれから絶対に生き残る選手になるからだ。サマーリーグとフューチャーズリーグに出場できるのは2年生まで。リーグ戦を主戦場とするべく、チャンスをもらったら確実に爪痕を残せる選手をめざす。
3年生になる今年は、春季からベンチに入ってリーグ戦に出場することを目標に掲げている。指導者から活かすべきだとアドバイスを受けた打撃を武器に、代打でもいいから練習試合ではもらったチャンスをすべてものにしてリーグ戦に食らいつき、「春はリーグ戦で5本ヒット打ちます。秋は10本打ちます。ホームランも打ちたい」と結果に貪欲にこだわる。試合を見に来てくれる両親にホームランを見せて親孝行したいと意気込み具体的な目標を立てて練習に励む姿勢は、中学以来ずっと継続してきた人間観察と辛抱強い努力の賜物だろう。
「継続は力なり」。強打が光るキャッチャー石﨑に大きな結果が花開くと、信じている。(=敬称略)
(写真提供:国学院大学野球部)