大学野球における若手育成 第13回 東京大学・門田涼平内野手(松山東・2年)

※この記事は「大学野球総合版~2024年秋季リーグver~」に掲載された記事を修正・再加筆したものです。

一撃で飛ばせ 憧れの舞台・神宮の大きな空へ

2024年春季、2年生ながら六大学野球のリーグ戦で4打席出場した門田涼平。「六大学で野球がしたい」という一点で愛媛の公立高校からの上京を決意した、少し変わった進学動機の持ち主である。

愛媛県立松山東高校出身の門田。県内では勉強も部活動も高いレベルにある進学校だ。授業と並行して野球部の練習もハードで、「頑張る基準が上がったかなって」と体力的にも精神的にもキャパシティがかなり上がった実感を振り返る。高校では2、3時間だった練習時間も大学で大幅に長くなったが、高校生らしい楽しみを捨てて勉強と野球どちらもに取り組んだ当時の努力のおかげで食らいつくこと、さらには「向き合う時間が増えて嬉しい」と純粋に野球を楽しむことさえできている。

しかし強豪校ではあるものの、地方大会で優勝し甲子園に出場するほどに実力のある高校ではない。それでも門田は、「六大学」で野球がしたかった。

その目標が現実味を帯びたのは高校1年生の冬。門田が大学でも野球を続けたいことを知っていた担任の先生に、東大野球部を勧められた。六大学に所属する他大学は甲子園出場者が推薦で入部するような強豪チームばかり。野球部に入れたとしても部内での争いが熾烈だ。しかし東大でなら。比較的少人数のチームで、実力でベンチメンバーをつかみ取ることができる確率が高い。学力的には上位ではなかったというが、「神宮でやれるって思ったら頑張れました」と受験勉強のスイッチが入った。

それほどに門田の六大学の舞台への憧れは大きく、強かった。「スケールが違うし、魅力的に感じるんですよね」。プロのドラフト1位候補を擁するようなチームと対戦できるし勝利するチャンスだってある。

春季リーグ、代打ながら門田は2年生にしてその4打席に立った。憧れつづけた舞台。正直、浮き足立った。落ち着こうとしたものの結果は4-0。リーグ戦の最前線、一枚も二枚も上手の実力を見せつけられ悔しい経験となった。とくに力を感じたのは法政の篠木。まっすぐで攻められ、どう打ち返してもファールになる。「手も足も出なかった。非力さを実感しました」。

しかし確かに手がかりを感じた部分もある。門田の武器は力強いスイング、それをどんなピッチャーに対しても初球から思い切りよく発揮できること。高校の頃から意識している。直球に押されないで狙った球を一球で仕留めるスイングをさらに磨き、しぶとく結果を出したい。2年生の秋は代打でいいから経験を積む期間に。そして3年生でレギュラーを掴み、憧れつづけた神宮での「六大学出場」をものにしたい。東大は出場のチャンスが部員全員に均等に与えられるが、そのぶん一回のチャンスで力を示さなければならない。牧秀悟(横浜DeNAベイスターズ)のような「打てるセカンド」を目指し、100%のアピールを図る。

神宮でプレーするのがずっと目標だったから、大学卒業後は野球を続けることを考えていない。目指す職業はパイロット。英語が得意で、自分にできる仕事を分析したという。野球部で鍛えた身体の丈夫さを武器に文武両道で歩んできた集大成を実現したい。

愛媛から神宮球場へ、そして雲より上の世界へ。門田涼平のスケールの大きな挑戦は続く。