大学野球における若手育成 第19回 国学院大学・石井嘉朗捕手(桐光学園・2年)

※この記事は「大学野球総合版~2024年秋季リーグver~」に掲載された記事を修正・再加筆したものです。

4年生の神里陸(東海大相模)が正捕手として座り、3年にも立花祥希(横浜)がいて捕手の層が厚い現在の國學院大學。そこに3枚目の捕手として食い込もうと挑むのが、2年生の石井嘉朗(桐光学園)である。

入学早々、桐光学園で主力だった米山幸汰ですら容易く活躍できない大学野球のレベルの高さを目の当たりにした石井。「やるしかない、頑張るしかない」と腹を括った。

初めての寮生活に慣れてからは自主練習に注力している。パワーとスピードの不足を補い、昨年度のフューチャーズリーグでは首位打者となり、1年生ながら秋のリーグ戦メンバーにも選ばれた。

 石井の強打には秘密がある。足を大きく上げるバッティングフォームだ。

 桐光学園のコーチ・天野喜英氏(桐光学園~東海大~セガサミー)の提案で、高校1年の冬に足を上げるフォームに挑戦。それまで一度も試したことがなかったというが、体の使い方が上手くはまって打球が飛ぶようになり柵越えホームランも打てるようになった。「自分がいま野球を続けてるのも、その冬があったからかなって」。

キャッチャーとしては試合を作るリードに自信を持つ。調子が良くても悪くても、その状態でどう打者を抑えるのか、どう試合の流れを作るのか。「野球の勉強が好き」と言い、トレーニング以外でも努力を重ねる。自分の構え方やピッチャーへの声かけにも意識を配る。同期の森谷投手は「声が高いから印象に残る」と評していて、石井の通る声がマウンドの、そしてグラウンドの空気を支えているのだろう。ちなみに石井の美声はオフの日のカラオケにも発揮されていて、十八番はレミオロメンの『粉雪』だというからすごい。

目標にするのは、身近でその実力を体感している4年生の神里陸。他大学を見ても石井の目に一番良い選手だと映る、すばやく動けるキャッチャーだ。國學院は大所帯ながらAチームとBチームが一緒に練習していて、神里の動きを近くで見ることができる環境が石井に味方する。練習が厳しくても、「キャッチャーやってるときが楽しいから頑張れる」。

 打撃で目標にするのはソフトバンクホークスの近藤健介。ホームランが打てて打率も高く、しかも広角に打てる。守備でも打撃でもチームに貢献することを目指す。

 秋季の目標はまっすぐにリーグ戦「出場」。1年の秋季はベンチ入りこそしたものの、試合出場は叶わなかった。今度こそ試合に出たい、大学日本代表に選ばれるような選手がいるときに同じポジションに割って入る。

 対戦したいのは青山学院大の鈴木泰成(東海大菅生)。高校時代にも対戦したことがあり、当時の鈴木は怪我明けにもかかわらず、石井が今まで見てきた中で一番球が速くて一番フォークが落ちる印象的なピッチャーだった。もう一度対戦してストレートを打ち返したいと意気込む。

さらに先の目標には「全国大会出場」を据える石井。小中高と活躍してきたけれど手にしたことがない全国大会への切符を、東都リーグで優勝して掴みたいのだという。大きな舞台で成果を残してこの先のステージでも野球を続けられるように、大学野球の一日一日を着実に歩む。

その声で、強打で石井が大舞台の扇の要を担う日は、きっと近い。 (敬称略)

写真提供:国学院大学野球部