
※この記事は「大学野球総合版~2024年秋季リーグver~」に掲載された記事を修正・再加筆したものです。
夢は必ず叶えてみせる 考えながら、ワクワクしながら
1年次の成長を弾みにリーグ戦出場の機会を掴む、と力を込めて臨んだ2024年春季シーズン、森谷大誠(札幌大谷高校)の自己採点は30点と低い。3月のオープン戦前に肩を怪我してしまったからだ。春季リーグでの登板を現実的な目標にしていただけに、選手として全くチームに貢献できないのは辛く苦しい出来事だった。
しかし、成長を実感する部分もある。たとえば考えのループにはまってしまうという悩み。監督との面談を経て「ポジティブな考えを増やそう」と意識の持ち方を変えるようにした。失敗したとしても、その原因を冷静に分析して次の機会にプラスにつなげるように意識する。切り替えを速くして思考をすべてプラスに向けることで、少しずつ癖と上手く向き合えるようになった。
自分のペースを崩さない線の太さも持ち合わせる。森谷の座右の銘は「強気・冷静・ワクワク感」。冷静さを失ったら調子が崩れるし、冷静でも強気でないと実力が発揮しきれない。なにより自分がワクワクしなくては野球を楽しめない。三つが揃っていれば上手くいくしどれが欠けても上手くいかないから、高校の時から大事な場面ではそのバランスを意識するのだという。怪我をしたときに一番辛かったのは「野球ができないこと」そのものだったというくらい野球が大好きな森谷。だからこそ、野球を楽しいと思う気持ちを忘れたくない。
「楽しみたい」気持ちはイコール「突き詰めたい」決意になる。物心つく前からバットとボールを握っていた森谷の夢はずっとプロ野球選手。大学には絶対プロになるため、その目標に限りなく近づくために来た。ワクワクを大切にする意識も考えすぎてしまう癖もルーティンに頼らないどっしりとしたマイペースさも全部、野球が好きなままで夢に向かう気持ちを切らさないための材料なのだ。「この人が投げたら大丈夫」という絶対的な安心と信頼を築き國學院のエースとして活躍した武内夏暉(現埼玉西武ライオンズ)の大学からプロへの道を間近で見て現実味を帯びてきた思いの強さが、それだけ森谷を支えている。
武内を心から尊敬していて、ピッチャーとしてだけでなく監督や周囲のチームメイトから頼られる人間としても目指す存在だ。圧倒的な実力だけでなく、他者の目に誠実に映る人間性を憧憬している。
東都リーグでプレーする同郷の選手の存在も森谷を奮い立たせる。札幌大谷高校でバッテリーを組んでいた將田明基選手(東京農業大学3年)とは中学から一緒なこともあって、東農大が東都リーグ1部に復帰したいま、いちばん戦ってみたい相手。自信があるストレートで三振に抑えたいと意気込む。リーグ戦で登板すること、そこで確実な結果を目指すことを手に届く目標に据えて、着実に歩を進めていく。
肩はもう治った。高校で叶わなかった「プロ野球選手になる」という夢を絶対に達成するためには3年、4年で活躍しなければならないと自分に強く言い聞かせ、2年生の今年は実戦で登板する機会を得て経験を積む期間にしたい。新潟で開催されたサマーリーグや夏のオープン戦で100%の実力を発揮し、リーグ戦登板の少ないチャンスを今度こそ掴み取る。 (敬称略)
写真提供:国学院大学野球部