
※この記事は「大学野球総合版~2024年秋季リーグver~」に掲載された記事を修正・再加筆したものです。
真剣だったから悔しいと思える 全力でいちばん上へ
1年生ながら入学すぐ今春のリーグ戦にセカンドで4試合出場した森澤拓海(履正社)。だが6打席1安打と結果を残せず、「最初はチャンスをもらったけど自分としては悔しい半年だった」と振り返る。
打者としてはまず体が違うし、パワーが自分と段違い。守備面でもスピード不足が目に見えてわかった。自分は打席に立てば率を残せるバッターだと思っているが、その良ささえ一線級のピッチャーには通用しない。東都1部リーグのレベルの高さを痛感した。
6歳ごろに野球を始め、もともとは上のレベルを目指して野球をやっていたわけではないという森澤。楽しみたい、サボらないし余計なこともしないけれど特別頑張るわけでもないという意識ががらりと変わったのはオリックス・バファローズジュニアに選ばれたことがきっかけだった。実力のあるメンバーが懸命に練習するのを見て追いつかないといけないと感じた。
その意識に高校に入学して磨きがかかる。同級生の福田幸之介(現中日ドラゴンズ)のストイックさ、二遊間を守った1学年上の光弘帆高(明治大学)の肩の強さや技術の高さを間近で見て、そのレベルで野球をできるようにすべてを賭けて励むようになった。高校時代は自宅から通いだったために自主練習には夜遅くに取り組み、帰る方向が一緒だった光弘に技術やトレーニングを教えてもらっていたという。明治大学という大所帯のチームでチャンスをつかんだ光弘が今もなお目標にする存在で、「自分よりまだまだ上の存在がいる」と上を向くことができている。
大学では自主性が求められる環境で、だからこそ1日程度のオフなら次の練習に繋がるように準備したり実戦の場で感じたパワー不足、スピード不足を補うトレーニングをしたりとストイックに取り組むことができている。寮では朝起きてすぐや寝る前のギリギリでといつでも練習ができる環境が整っていて、「恵まれている」と感じている。
それだけストイックであっても、リーグ戦のあとの長期オフにはしっかり羽を伸ばすし「海外で喋れるぐらいの英語を勉強したい、将棋も興味がある」と野球以外の部分でもメリハリをつけて充実している森澤。それには高校の多田晃監督、大学の安藤寧則監督の人間性が影響しているという。
履正社で森澤が1年生のとき(2022年)から指揮を執る多田監督は、野球に対して真剣で、栄養や技術を自ら率先して学んでくるような人物。選手と一緒に戦おうとしてくれる姿勢が森澤の印象に残っている。いま、大学で指導してもらっている安藤監督も同じように選手と並走してくれる人物で、「野球100、学業100、遊び100」と何事にも全力で取り組むことを教えてくれている。高校から大学に進んで野球への取り組み方が大きく変わらなかったから、森澤の成長曲線は止まらなかった。
恵まれた環境で真剣に野球に取り組んで、「あいつに負けたら仕方ない」と言われるような選手を目指したい。目指すのは高校の先輩である光弘と、フィジカルの強さが圧倒的な藤原夏暉(青学3年)。藤原は敏捷性が求められる内野手ながらも、まずはウエイト、その次にスピードを求めるトレーニングをしていて、森澤にとって身近にいる貴重な存在だ。
培ってきたストイックさと置かれた環境で走攻守の全部がそろった活躍を見せ、きっとこの春の悔しさを晴らす。 (敬称略)