この記事は東京六大学野球図鑑2024年春季リーグverに掲載されたものです。
群馬県・前橋高校から一般入試で大学に合格し、セレクションを経て慶應義塾大学野球部に入学した斎藤快太内野手。一般的に六大学野球で活躍している選手とは少し違う道をこれまで歩んできているようにも思える。高校時代、下級生ながらレギュラーに定着すると周囲からは六大学でプレーすることを勧められたという。当初はあまり自信はなかったものの、次第に結果が残せるようになり六大学への進学を強く希望するようになった。選んだ道は一般入試。その中でも野球部で活躍する機会が多いと考えた慶應義塾大学や早稲田大学への進学を考えたという。「慶應に行った先輩はあまり聞かなかったので、チャレンジしてみようと思った」と当時を振り返る。商学部に合格することだけを考え、勉学に励んだ。入試科目は英語、日本史、数学。高校2年までは理系であった斎藤にとって数学は得意科目。大河ドラマを見ることが好きだったこともあり、日本史にもなじみがあった。結局、英語に注力することができ、見事に合格を果たした。商学部の入試が行われた2月14日。その年の大河ドラマ「青天を衝け」の初回放送日だったことは今でも覚えている。
野球部に入部した後、強豪校でプレーしてきた選手との差に驚いた。差を感じたのは技術面以上に体力面であった。「高校より練習が多かった、強豪出身の選手は平気な顔をしていた」。それからは普段のランニングから人一倍取り組むようになった。今では斎藤がチーム内で一二を争うほど練習する立場となったという。また、強豪校出身の選手は高校時代から高いレベルの野球を経験しており、勝負どころに優れていると感じた。「相手が有名なピッチャーだと怯んでしまうこともある。普段の圧倒的な練習量でやってきたという自信で勝てるようにする」ことを心がけて三年間プレーしてきた。
自身のように高校時代に決して十分な実績がある選手が他の選手と互角に渡り合うためには頭の良さを含めた努力が必要だと語る。「努力するしかない。いっぱい頑張るといった単純なものではなくて、自分がどういう選手になれば試合に出ることができるか考えて、そのために能力を向上させる練習をすること」が重要だと斎藤は話す。自身にとって他の選手と勝負できると考えたのは守備。もともと自信はあったものの、慶應義塾大学野球部に入学後に上級生や監督に評価されてさらに自信がついたという。努力が実り、2年生からはショートの守備固めとして出場するようになった。そして、3年の春にはついにレギュラーに定着した。
しかし、昨年の秋は打撃の調子が上がらず、打率は1割台に落ち込んだ。早慶戦の2戦目以降はスタメンを外れ、日本一を決めた明治神宮野球大会でもスタメンでの出場はなかった。今年は「ちょっと良い選手止まりからこの選手はすごいと言われるような他の選手を圧倒する結果を残す一年にしたい」。自身にとって慶大野球部は人として180度変わることができる場所。「高校までは能力だけでやってきた。自分を一番追い込む気持ちで野球をやってきた。人として変化することができる場所」だったと振り返る。これからも成長を続ける。「みんなの注目の的になるような人になりたい。そうなるとアスリート、それもずっと自分がやってきた野球でしかなれない。そうするとプロ野球選手になることが目標となる」。スタート地点は決して有利とは言えなかったかもしれない。しかし、頭を使った努力をすることでその差をすぐに埋めた。あとはこれまで三年間の努力を開花させるだけだ。
スイッチヒッター 2024年総括ver.にも斎藤快太内野手の記事が掲載されています。よろしければそちらもお買い求めください!