※この記事は「大学野球総合版~2024年秋季リーグver~」に掲載された記事を修正・再加筆したものです。
東京六大学野球が早稲田大学の優勝で幕を閉じた次の日、下級生を主体としたフレッシュトーナメントが行われる。6月3日に行われた立教大学との初戦の先発を務めた外山稜太郎の活躍が光る。あれよあれよという間に5回ノーヒッター。キャッチャーの福原聖矢のリードに合わせてテンポよく抑えて行く。
外山は理工学部の2年生。授業のある日は合宿所のある府中からキャンパスのある生田までのおよそ12キロを50分ほどかけて自転車で通う。漫画やアニメで知られる「弱虫ペダル」をきっかけにロードバイクに関心を持ち、長い距離を走ることが好きになったという。川沿いを走る時に感じる涼しい風。自転車に乗りながら見える美しい景色。様々なルートを開拓することが日々の楽しみとなっている。最近では近隣の野川沿いのルートを気に入っている。
理工学部は一限から授業があることが多い。野球部の練習がオフとなる火曜日でも朝から大学へと向かう。野球部の練習がある日は朝練習をこなした後に大学へと向かい、合宿所へと帰ってきた後にキャッチボールやウェイトトレーニングにいそしむ。理系学部となると学業との両立も容易ではない。「日頃から勉強していかないとテストで点数が取れない科目であったり、毎週ある実験のレポートを書いたりすることがすごく大変」。他の選手を羨むこともある。それでも走り続ける。
桜美林高校でプレーしていた頃の外山についてかつてのあるチームメイトは「良いスライダーを投げるピッチャー」と評価する。しかし、大学入学後はスライダーを投じることは少なくなった。それは投球フォームが変化したからだ。高校時代は監督の方針に従い、今よりも腕の位置が少し低いフォームだった。すなわち、スライダーがより効果的なフォームであった。しかし、大学入学を契機に自らにより合っていると考えるオーバースローにより近いフォームへと変化した。フォームの変更により投球の傾きが少なく、回転軸が垂直のいわゆる「きれいな真っすぐ」を投げることができるようになった。計測によると外山のストレートは決して回転数は多くはない。しかし、結果として初速と終速にあまり差のないストレートが実現した。バッターからも「速く見える」と評価されることもあり、回転数が少ないことは一つの個性であると考えている。現在はストレート、カーブ、フォークの3球種を投じており、横変化の変化球は持ち球にはない。現在はコントロールを維持しつつ出力をあげるべく試行錯誤している。
高校最後の夏、それまではなかなか勝ち星には恵まれなかったもののベスト8まで進む。そして、選んだ進学先は明治大学。「元々高校受験で早慶に落ちて最後に残った桜美林に入った。大学受験も自力で受験して入ろうと思って、精一杯勉強して受験して、最終的に合格したのが明治大学と青山学院大学と芝浦工業大学だった。その中で野球を続けられるし、あと一番良いのは明治だと思った」。野球人として活躍することを考えると難しい選択肢を取ったのかもしれない。しかし、困難にも負けずに走り続ける。
「簡単じゃない 何だって だから全力でやるんだ!!」。
弱虫ペダルの名句が脳裏を駆け巡る。
写真提供:明治大学野球部