大学野球における若手育成 第3回 日本体育大学・澤田太陽投手(桐蔭学園・3年)

※この記事は2024年4月発売「大学野球総合版〜2024年春季リーグver」の選手インタビュー記事を加筆・修正したものです。

一般生からの活躍 開花したコントロールで掴み取れ

 「ミスしてもいいから前に進む、挑戦するっていう雰囲気」。日本体育大学の新3年生ピッチャー、澤田太陽は気持ちの持ち方について大学野球をこう表現する。自分の時間が多いから、トレーニングはコーチの提案から自分にとっていいものが何かを選び取り、自主練習についても自分で考えて取り組むことが多くなった。

 澤田といえばコントロールの良いサイドスローが特徴だろう。中学1年での怪我をきっかけに転向したサイドという投げ方自体がひとつ個性であり、変則ならではの曲がり方をする球を活かした組み立てができるのが武器だ。しかし、一方で左打者には攻めづらいという難点もある。澤田自身も左バッターへの対応が課題であると意識していて、有効な持ち球スライダーの精度を磨くことを直近の目標に掲げる。

 同期で意識するのは右のサイド気味のスリークォーター、伊藤大稀投手(新3年・智辯和歌山高校)だ。1年からリーグ戦にも登板し一軍のチームで戦っていて、投げ方が似ている同学年の投手となれば気になるのもうなずける。また母校・桐蔭学園で3年間を共にした法政大学の松下歩叶内野手の活躍も刺激になる。投手と野手でポジションは違っても、活躍を目にしたときには連絡を取り合って自分を鼓舞するのだという。

 「成長を見せられる場だから試合を見に来てくれるのは嬉しい」と、野球人生を支えてくれている両親への感謝も忘れない。桐蔭学園の高校時代からは寮生活を送る澤田が実家に帰ることは少ないけれど、不自由なく野球を続けさせてくれる両親に試合で活躍する姿を見せることも澤田のモチベーションのひとつなのだ。

 一般生として日本体育大学硬式野球部に入部した澤田。はじめは推薦生のほうが試合への出場機会も多かったというが、確実なアピールを積み重ねることによって一般生であってもチャンスをつかむことができるという。Future’s Leagueや日本体育大学が月曜日の夕方に主催するMonday Night Gameといった試合では1、2年が主要メンバーとなる試合に選出され、そこで実力を見せれば一軍チームに近づくことができる。日体大の選手には一般・推薦に関わらず等しくチャンスが与えられていると言っても過言ではないだろう。

 少なくないチャンスと主体的な活動内容。学生コーチやチームメイトとともに選手一人ひとりが着実に成長を目指すことができる環境によって、質と量が両立したトレーニングをこなすことができる。

 同学年の池本琳投手(東海大相模高校)と一緒にトレーニングをすることもある。伊藤、池本両投手、また同じラインで切磋琢磨している年見亮太投手(宮崎南高校)とも情報を共有しながら上のチームを目指す。「本当にいい環境です」と充実した練習環境で意欲的にトレーニングに取り組んだ大学野球の前半戦を振り返った。

 春のシーズンからは3年生となり、リーグ戦のメンバー編成に本格的に関わりはじめる。高校から大学へ進み、練習の質も量も練習への取り組み方も変化したことで身に着けた力も、今のままでは通用しない。もちろん実力は伸びた。高校まではそこまでではなかったというコントロールは絶大な武器になったし、「大学に入ってポーンと上がった」と振り返るようにスピードも成長した。教員を志望し、一般受験を経て入学した日本体育大学の野球部で、澤田自身、「自分の実力が上がっていくのが目に見えて分かった」と成長と伸びしろを自覚している。投手のライバルが多い学年のなかで変則の投げ方は使われ方が限定的かもしれないが、得意を伸ばし「自分の任された所をしっかりこなして信頼されるような選手になること」を目標に据え、春に臨む。 (=敬称略) 

(写真:日本体育大学野球部)