
※この記事は2024年4月発売「大学野球総合版〜2024年春季リーグver」の選手インタビュー記事を加筆・修正したものです。
期待に応えてリーグ戦へ 打席で胆力を鍛える
上田琉久外野手のアピールポイントは、打席の中で迷わず自分のスイングができること。2023年のシーズン、1、2年生の選手が出場する日体大主催のMonday Night Gameでは4番を任され、183cmの大きな体で振り抜く力強いスイングで長打を期待される新3年生の右バッターだ。
2年生のシーズンはもどかしさが募る期間だった。1年の10月に肩を怪我してからは守備に入れず、打撃も思うようにはいかなかった。あっという間に時間が過ぎて気がつけば3年生になり、大学野球の前半2年間を振り返ると「何もやってない、何もできてないので」と満足な結果が残せていない現状への思いをにじませる。
目下の課題は、試合で打席に立ったときに一球で仕留めるコンタクトの力。与えられた打順で与えられた役割を果たすために、甘い球を間違いなく捉えられる確率を高めたい。自身の強みである「自分のスイング」にコンタクト力が伴えば、もっと恐いバッターになるに違いない。そのためには試合で実践の機会を通して模索するのが着実な道だろう。Monday Night Game、部内での紅白戦と日体大は公式戦以外にも試合が多いそうで、下級生であっても出場の機会、言い換えればアピールの場が少なくないと実感している。そこで力を見せることで、上のチーム、そしてリーグ戦に絡む選手を目指すことができるのだ。コンタクトを磨くためにも打席での役割を全うする胆力を鍛えるためにも、試合の出場機会は意欲的に取りに行きたいと前のめりだ。怪我でできていなかった守備ももう再開できる。1年間できなかった守備練習にこれからはギアを上げて取り組み、打撃・守備の両面でチームへの貢献をアピールしていく。
思うような結果が出せず歯がゆい中でも上田はめげなかった。同期の黒川怜遠外野手(星稜高校)、門馬功外野手(東海大相模高校)、宮崎智生内野手(福井商業高校)と仲が良く、友人となんでもないことを喋るのが息抜きになる。東邦高校の同級生で立教大学の鈴木唯斗外野手とは冬休みの帰省中に自主トレを共にしたり、六大学・首都大学とリーグは別々だが予定が合えば関東で高校の後輩も交えて食事に行くこともあるという。また明治大学で2023年度の主将を務めた兄の上田希由翔内野手(千葉ロッテマリーンズ)にも連絡を取って野球を教えてもらうことがあるそうだ。野球を始めるきっかけであり、「そういう(高いレベルで一緒にトレーニングをしたり野球のことを相談したりできる、目標となる)人が身近にいるのはいいこと」と慕う兄の存在や周囲の人とのかかわりが、上田にとっての大きなモチベーションなのだろう。そして兄だけでなく、家族の支えがあってこその今がある。実家から寮に戻ってくるたびホームシックになりながらも寂しさを忘れるくらい目の前のトレーニングに打ち込む。
「何もやってない、何もできてない」ままでは終われない。春のシーズンからは3年生になり、自分の練習ばかりでなく後輩の面倒を見る立場になる。3年目を見据えて、まずは人として、野球以外の部分でも後輩の手本になれる選手を目指したいのだと前向きに話す。もちろん野球の部分ではリーグ戦に関わる選手を目指し、コンタクト力という課題を克服してチームへの貢献をアピールしていきたい。打席の中でも迷わず自分の強いスイングができる上田が昨年、4番を任された意味。求められる役割は、自覚している。 (=敬称略)
(写真提供:日本体育大学野球部)