【2024年ドラフト候補過去記事公開】第三回 早稲田大学・吉納翼外野手

「自分が思い描いていた優勝という景色を早く見たい」

 「大学野球を通しての自分が思い描いていた優勝という景色を早く見たい」。昨秋自身は打率3割を残し、3本塁打を放ったものの、チームは優勝まであと一歩届かなかった。今年からは副将を務める吉納翼外野手は悔しさを口にする。「負けず嫌いというのも性格としてあるんで、例えば3打席ある中で3本ホームランを打っても、 ピッチャーが4点取られたら負けるという考えなので、勝つためにどう戦うかということを考えている。だから、個人も大事ですが、やっぱりチームが大事だと思っている」。

 春から秋にかけての成長は打席での心理状態の研究が大きな要因であったと振り返る。吉納が過去の映像を見返すと、打っている時は自分の表情や初球のボールの待ち方に余裕があり、どんな状況においても、勝っていると感じるようなスイングをしていたという。一方で、打つことができていない状況では初球の見方もどこか余裕がないようだった。バッターボックスの中でも無駄な動きが多かった。吉納は嘘をついている人の目の動きを例に挙げて、心理状態が行動に如実に現れると説明する。「ピッチャーも人間なので、どれだけ良いピッチャーと言われても、失敗することがあると思う。ピンチになった時に表情などを見て、今ピッチャーが苦しんでるといったことをしっかり試合中に分析できたことが、良い結果を残したことに繋がったのではないか」。自信を持ってプレーすることを心がけていることは今に始まったことではない。「堂々とプレーするということは、高校の監督の教えです。『相手を見下ろせ』とよく試合前に言っていた。自分がやってきたことを信じていいから、相手ももちろんやっているのを分かってるのだけど、まずは自分を信じろっていという教えだった。そのスタイルでやる」。

 打撃の好調は金森栄治助監督の指導による部分も大きい。1〜2年生の時は色々な人が色々なことを言うので、 足の使い方や動きなどを色々考えていた。3年生の時に金森さんが来てバッティングについて相談した。『お前は小学校、中学校の時なんか色々考えて振ってたか』と言われた。『いや、そんなことないです』と言うと『その時、打てていないわけないだろ。だからどういうことだ』と言われて、『とにかく自分のスイングをすれば良いんだ。本当にそれでいいんだ。ここまでやってきたことを無駄にする考えよりかは、とにかく強く振ることを意識しろ』と言われた。それ以降も打撃について考えることを辞めたわけではない。しかしながら、「強く振る」という基本に立ち返り自分のスイングをつらぬいている。

 大学に入ってからの最も印象に残ったイベント。吉納にとってそれは昨年春に行われたロサンゼルスキャンプであった。アメリカの選手と交流する中で考えの違いに驚いた。「野球に対しての取り組みは、日本はちょっと固いイメージがある中で、とにかくアメリカの大学生は明るくやる。日本ではしきたりや挨拶を大事にする。もちろんそれも大事だが、野球を純粋に楽しんでやっている。失敗してもオッケーだから挑戦するというマインドが、高いレベルでやり続けている秘訣なのかなと感じた。野球に対しての考え方とかも、打てなかった時でも次の打席があるからそこで失敗しないように引きずりすぎない気持ちを試合の中でも考えている」。全てを取り入れるわけではない。しかし、純粋に野球を楽しむことができたら良いなと思ったと吉納は語る。最終学年の今年、もちろん重圧もかかるだろう。しかし、好きな野球を楽しみながらプレーすることに変わりはない。

(写真提供:早稲田大学野球部)