【2024年ドラフト候補過去記事公開】第二回 早稲田大学・印出太一捕手

「プレッシャーは伴ってくると思うが、それを跳ね返すだけのものがあると思われての主将への就任だと思う」

 今年度、早稲田大学野球部のキャプテンを務める印出太一主将の野球人生の転換点は中学2年生の時にやってきた。「当時のチームの監督に呼び出されて、『野球で行きたいのか、勉強でいきたいのか、どっちだ』と言われて、『野球で行きたいです』と即答した。すると、『だったら今のままじゃ厳しいぞ。そこらへんのまあまあなところへ行って、まあまあの野球人生で終わるぞ』と言われた」。印出の心構えが変化したのはその頃からだった。「中2の1年間と中3の1年間、多分中学生で1番バットを振ったと僕は思う。学校から帰ってきたらすぐ練習場へ行って、4時半とか5時くらいから10時、10時半ぐらいまでバットを振って、帰ってきて学校へ行って、また行ってというのを週6日繰り返してきた」。強豪の中京大中京高校、早稲田大学でプレーできているのはその頃の努力の結果と振り返る。

 気持ちが変化した中学と全国大会を制覇した高校。印出はどちらのチームでもキャプテンを務めた。そして、大学でも再びキャプテンを務める。「中学、高校とキャプテンをやってきたので、そういった経験であったりとか、選んでいただいた理由を自分がしっかり考えないといけないのかなと思った」。主将の重圧をひしひしと感じている。「自分で114代目のキャプテンになるんですけれど、下級生の頃にレギュラーとして試合に出ていた頃と周りの見方も変わって、任されてるものは大きいんだなと改めて感じた。その分、プレッシャーは伴ってくると思うが、それを跳ね返すだけのものがあると思われての就任だと思う。とにかく練習で積み上げていくしかないと思っている」。

 高校時代、小宮山悟監督に早稲田大学にスカウトされた際の会話は今でも覚えている。「監督さん、日本一にします。大学でお世話になりたいと思います」。大学入学後すぐは多くの言葉を交わすことはできなかった。「下級生の頃は自分なんかが喋りかけていいのかなと思うくらいオーラはあった。でも、自分から積極的に質問したりアドバイスを求めたりすると、丁寧に優しくわかるまで教えてくださる」。投手出身の小宮山は時にはピッチャー視点でバッターの弱点を指導してもらうこともあるという。監督を日本一にするとの約束をしてから4年ほどがたった。早稲田大学が最後にリーグ優勝を果たしたのは2020年の秋。印出はその約束をまだ果たせていない。「リーグ戦で勝たないと意味がないですし、早稲田はやっぱり勝たないといけないと思う。 自分たらが入学する直前の早川さんが優勝して以来、優勝していない。でも、この状況は高校時代にちょっと似てるなっていう風にも思う」。高校時代に自らが主将になった際も決してそれまでの状況は良くなかった。「高校時代甲子園に行ったこともない状態で新チームで神宮大会で優勝したいという目標を掲げた。周りは多分『何言ってんだよ』くらいの感じで思っていたと思うんですけれど、僕らは結構本気だった。練習を積んでチームが勝ちながら成長していきましたし、最後に神宮大会で優勝した時は言葉にはなかなかしづらい感情が出てきてめちゃくちゃ嬉しかった」。新チームが始まってすぐの中京大中京が高橋宏斗投手(現・中日ドラゴンズ)と印出のバッテリーで明治神宮野球大会を制したことは記憶に新しい。それまでの数年間、甲子園出場がなかった中京大中京と3年間優勝から遠ざかっている早稲田大学の状況は確かによく似ているようにも思われる。だからこそ、印出の活躍に期待をせざるを得ないのだ。