【2024年ドラフト候補過去記事公開】第一回 静岡大学・安竹俊喜捕手

※この記事は「大学野球総合版~2024年春季リーグver~」に掲載された記事を編集・再加筆したものとなります。

全国ベスト4への意識

 昨秋から静岡大学野球部の主将を務める安竹俊喜捕手。人生で初めてキャプテンを務めるチームの門出は前途洋々とはいかなかった。「一個上の台から5月に代替わりして引き継いだ。自分が入ってから2位のような時期が続いていた。上がり調子の状態でバトンをもらい楽観的に考えていた訳ではないが、この調子で自分達の代も強い静岡大を思い描いていたが、全然違う結果になった」。第5週までは8勝2敗とまずまずの始まりであったが、それからの2カードは日大国際関係学部と東海大静岡に4連敗を喫し、順位も4位に落ち込んだ。それまで当然のように優勝争いに参加した静岡大学にとって試練となる秋だった。「自分たちのやるべきことができなかった」と反省の弁を述べる。主将として選手の意識改革をはかっている。

 強豪校以外の出身者も多い静岡大学野球部の中で高校時代に甲子園の土を踏んだ安竹は稀有な存在だ。高校は名門公立校の静岡高校。「自分が静岡高校に行った目的は甲子園に行きたい、甲子園で勝ちたいという目標があったからだったので、その目標は達成できた。でも、自分が活躍するっていうはいのは全くできなかった。ブルペンキャッチャーとして裏での貢献はできたと思うんですけど、自分が思い描いてたのは、やっぱり試合に出て活躍する、貢献するってことだった。それができなくて悔しい思いと、甲子園に行けたっていう思い、半々ぐらいです」。甲子園に出場することができた中でも一抹の悔しさが残る高校時代が野球への思いをさらに強くした。出場機会を求め、静岡大学に一浪の末に入学した。地元の大学であり、自らが試合に出ることができる。なおかつ、全国の舞台で活躍できる可能性があるために進学を決めたという。

 「野球だけやってるって言い方悪いかもしんないですけど、野球にかけてる人たちとどう戦っていくかっていうのは難しい。自分たちは実力も劣りますし、練習量や練習環境でも劣るので、そこの差をどうやって埋めたらいいかなって」。決して有利とは言えない状況で他の強豪大学と互角に渡り合うための方策を、安竹は常に頭に巡らせている。ヒントとなっているのは昨年のドラフト会議で広島東洋カープに育成2位で指名された佐藤啓介の言葉だ。「自分たち静岡大学が勝つには短い時間で頭を使って練習していくしかない」。名門・中京大中京高校出身の佐藤は入学後、チームに高校時代に全国で戦うために行っていた練習をチームに共有したという。また、自身でもスイングの動画を撮影することでフォームを分析したり、毎スイングごとにブラストの数値を把握して日々練習に打ち込んでいた。道具に頼ることは効率の良い練習を行うための一つの手段となる。金銭面の問題があり、全ての部員が道具を用いて練習を行うことは難しい。しかし、どのような環境下であっても一人一人が目的意識を持って練習に取り組むことは可能だ。

 全国ベスト4を目指すためには部員が相応の意識を持つことが重要だと安竹は考えている。「やっぱり意識の問題なんですけど、全国ベスト4を目指す以上は、 強豪校出身の選手がたくさん集まってる強豪大学を倒さないといけない。まだまだそのチームとやり合うんだという意識は低い。最後にたどり着かなきゃいけないのは全国ベスト4なので、 そこに対するもっと強い意識をみんなで持っていかなきゃダメだなと思う。(今は)リーグで勝てればいいかなくらいの意識のレベルかと思う。そこの意識が上がってくれば自ずと野球の練習も、変わってくると思う。このチームだけではなくて、これからの下の代とかもそういう意識になってほしいなと思っている」。静岡大学野球部が当たり前のように全国ベスト4を意識することができるチームへと導くことが安竹の仕事だ。

(写真提供:静岡大学硬式野球部)