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【阪神2位】日本体育大学・馬場拓海投手「受け継ぎ、背負い、勝ちにいく」

※本記事は雑誌「スイッチヒッター2025年春号」における企画「大学社会人野球注目選手特集」の記事を再構成したものです。情報は当時のものとなります。取材にご協力くださった皆様に御礼を申し上げます。(編集部)

受け継ぎ、背負い、勝ちにいく

先輩の活躍を横目に

 日本体育大学の応接室には、プロ野球の舞台で活躍するOBの写真が数多く飾られている。ドラフト1位でプロ入りした松本航(埼玉西武ライオンズ)、矢澤宏太(北海道日本ハムファイターズ)。侍ジャパン相手にも好投した寺西成騎(オリックス・バファローズ)。挙げ始めればきりがない。かつて日体大を支えた主力たちの輝かしい栄光の数々である。展示されたグラブを見ながら、キャプテンの谷口翔生(東海大相模・4年)は冗談交じりに言う。「この部屋には自分たちはあまり入らない。一つもらいたいくらい。この青いのとかめっちゃかっこよくないですか」。そう言って笑みを浮かべる。隣に座るエースの馬場拓海(福岡大大濠・4年)も、とっさに口を開く。「一個もらえるなら、一番左の松本航さんのグラブがかっこいいから欲しい」。自らと同じようにエースとしてチームを引っ張る先輩に思いをはせる。「寺西さんは、自分が入部したときにはそこまで投げていなかったが、2年生になってから本格的に投げていた。寺西さんがマウンドに立ったときは、絶対に打たれないという安心感があった」。これまでは先輩についていった。しかし、これからは最上級生としてチームを支える。そして、ゆくゆくは栄光の一枚に名が刻まれるかもしれない。

 日体大にとっては雪辱を誓う一年となる。昨秋のリーグ戦では、長年しのぎを削ってきた筑波大に19年ぶりの優勝を許した。投打の主力選手が卒業し、新戦力の台頭が期待されるとともに、レギュラー陣のさらなる奮起が求められる一年が始まる。

先輩から学ぶ日から、後輩をまとめる日まで

「チームとしての雰囲気は、正直なところあまり良くはなかった。でも、黒川さん(=黒川怜遠・セガサミー野球部)や田邊さん(=田邊広大・東芝野球部)だったりが軸として成り立っていた。そこのぶれない強さは大きかった。今のチーム状況も決して良いわけではない。孤立する選手をなくして、自分や鈴木斗偉(山梨学院・4年)が軸になることができれば良い」。監督と選手の意向の違い、投手と野手の壁、選手が意見を言い出しにくい環境。昨年を振り返ると、さまざまな課題を抱えながらも、最上級生がチームをまとめるべく奔走していた。「去年の悔しさを持った選手が多く、ポテンシャルの高い選手も多い。チームとして戦うことが一番なので、孤立する選手がいたら、チームの優先事項を考えさせてプレーさせることが自分の役目だと思っている」。

 谷口の大学生活を振り返るうえで、先輩の存在は欠かせない。特に、高校時代からの先輩にあたる門馬功(SUBARU野球部)の存在を忘れることはできない。谷口は門馬のことをしばしば「師匠」と称する。「日体大を選んだのも門馬さんの影響だった。プロ野球に行った大塚さん(=大塚瑠晏・北海道日本ハムファイターズ)や小島さん(=小島大河・埼玉西武ライオンズ)もいるが、門馬さんの人間性に触れて、この人と野球がしたいと思って大学を選んだ。全部がポジティブで、この人といるとマイナスな気分にならない。周りがついてくる人だった」。下級生の頃から、門馬と練習する機会は増えていった。門馬からよく言われたことは、今でも心に留めている。「自分は当てにいってしまっていたことが多かった。門馬さんには『それだけはやめろ』と口酸っぱく言われた。『良いバッターが振って三振するのは良い。でも、当てにいってしまうとピッチャーも怖くない』。そういったプレー以外の圧も、門馬さんは大事にしていた」。二人で素振りをした日々。素振りをしたときにどんな音が鳴っているか。どのようなピッチャーと対戦し、どのように振るイメージをするか。門馬の言動から吸収したものは多い。そして今度は、谷口が教える番になった。

 100人以上の大所帯を束ねる存在として、チームの雰囲気にも気を配る。「勝っているときと負けているときでは、チームの雰囲気が違う。このチームにいて負ける気がしないと思うこともあれば、不安要素が多く、負けるチームだと感じるときもある。どれだけ不安要素をなくすことができるかで、リーグ戦の本番になったときに結果を残せる。勝っているチームは不安要素が少ないと思う」。オープン戦では結果が出ないことも多い。しかし、その一つ一つを解消していくことで、少しずつ本番での結果につながっていく。

エースになる日まで

 いわゆるトルネード投法で知られる馬場拓海にとって、今年は真価が問われる一年となる。昨秋はまさに「エース」といえるピッチングを披露した。「春から秋にかけての飛躍は、先発をさせてもらったことが大きい。辻さん(=辻孟彦コーチ)に配球を教えてもらった。試合になるとキャッチャーの田邊さんが配球を考え、引っ張っていってくれた。試合で自分から配球について言うことは難しい。迷ったときには、田邊さんはこの球でいくというよりも、『真っすぐ、強気でこい』と言ってくれることが多かった。ランナーを出しても刺してあげるから、と言ってくれた」。馬場のピッチングは谷口も評価する。「馬場は先発で投げていて安定感があった。外野手同士で話をしていると、引っ張りの打球はほぼないだろうから、逆に行こうよ、というようにスムーズに会話ができた。テンポも良いので、点も取りやすくなった」。

 しかし、エースに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。福岡大大濠高では、先輩の山下舜平大(オリックス・バファローズ)や毛利海大(千葉ロッテマリーンズ)をはじめとするレベルの高い投手陣に囲まれていた。しかし、2年時にはトミー・ジョン手術を経験。上級生時代の大半をリハビリに費やした。「当時は、投げられるようになるのか心配だった。最初は手術に対してマイナスの感情を抱いていた。でも、今振り返ってみると、あの時に手術をして良かったと思う。頑張ったことが今になって表れているのかなと思う」。復帰できたのは大学1年時の7月。入学時には同級生はすでに練習を開始しており、球速も速かった。その頃、馬場の球速は140キロ台前半で、危機感を抱いたのもうなずける。それが今やエースなのである。

「ウェートトレーニングは1年からやってきた。重量も1年生の頃と比べるとだいぶ増えてきた。球速もそれと同時に上がっていった。ウェートは自分のためにやるなら、全然苦にはならない」。馬場の努力を谷口は知っている。そして、ウェートトレーニングの重要性を語る。「(自分は)ウェートはめちゃくちゃ苦ですよ。馬場はウエートルームに行くと毎回やっている。やっている選手はこうなっていくのが分かる。やっている選手とやっていない選手で差がはっきりしている。やっている選手は球も明らかに変わっていくし、結果も変わっていく。自分たちはチームでのウェートはあまりないので、個人に任されている部分が大きい」。自由に任されているからこそ、結果に差がつく。

チームのために何ができるのか

 春のリーグ戦に向けて、谷口は覚悟を示す。「日体大の代表で出ている責任感がある。主軸を打たせてもらっているからには、自分が打たない試合では負けるくらいの覚悟でやっている。学年が上がるにつれ、練習から意識も変わった」。今年も春から首都大学野球リーグでは激闘が繰り広げられる。昨年、優勝を許した筑波大もその一つだ。「自分は筑波が一番やりにくい。守っていても何かをやってくるのではないかと感じるし、いろいろなことを研究しているからこそ、全て分かっているのではないかと見透かされたような感じがする。やりにくさはあるが、そこは『馬場さん』の力でなんとか…」。そう言って、ふと馬場を見る。「力になることができていればよいのですが……。頑張りたいです」。馬場は、エースとしてマウンドに立つ堂々とした姿とは裏腹に、受け答えになると表情が緩む。「今年の春リーグの目標は、勝てる投手になること。毎試合、気を抜かずに勝てるようにしたい」。

 チームが勝てば、おのずと評価される立場。谷口は自らについて最後にそう語った。だからこそ、勝負強いバッターになりたい。ランナーがいる場面で安打を放つことができるバッターになりたい。そして、チームに向かって言う。「野手はもっと目の色を変えてほしい。打たないと勝つことができない。チームが変わったかのように鋭い打撃を見せてほしい」。馬場にとっても、自らの進路をかけた戦いだ。「社会人野球に行くか、プロに行くかは分からないが、今はプロに行くことを目標にしている。プロ野球には高校や大学の先輩である山下さんや寺西さんがいて活躍している。目標にして頑張りたい」。異なる歩みをたどってきた二人が、ラストイヤーに一つの目標に向かってグラウンドを駆ける。

<人物プロフィール>

谷口翔生/2004年12月9日、宮崎県生まれ。中学時代は宮崎くしまボーイズでプレー。東海大相模高校に進学。主に捕手としてプレー。2年次にはベンチメンバーとして選抜高校野球大会優勝を経験。3年夏には横浜高校に0-1で敗戦。日本体育大学進学後は外野手としてプレー。3年春は11試合に出場、11安打、打率2割8分2厘。秋には12試合に出場、11安打、打率2割6分8厘。新チームからキャプテンに就任。最近の楽しみは動画を見ること。板垣恵介の漫画作品『グラップラー刃牙』に登場するキャラクター「範馬刃牙」の物語が好き。

馬場拓海/2004年12月19日、佐賀県生まれ。中学時代は佐賀フィールドナインでプレー。福岡大大濠高校に進学。2年春には選抜高校野球大会にも登板。夏以降はトミージョン手術のリハビリに専念する。日本体育大学に進学後、1年秋からリリーフとして登板。先発を務めた3年秋には8試合に登板、4勝0敗、防御率0.95。趣味はアニメや映画を見ること。好きなものは「弱い人がだんだん強くなっていて、努力して、活躍する話」。一番好きな作品は『俺だけレベルアップな件』。

(写真は日本体育大学野球部提供)

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